はじめまして!の人はあまり多くないかもしれませんね……第39回定期演奏会1stステージで指揮を振らせていただきました、26トレーナーの山口です。今回の定演では1stステージでお客様の盛大な拍手とブラボーをいただいた後、続く2ndステージ一曲目でゴリゴリバキューン!なシンセを弾き散らかし、Summerで本番だけ妙にエモいピアノソロを弾いて、涙で目がかすみながら教会オルガンを弾き、3rdステージでは粛々とホルンを吹かせていただいたアイツです。2年生の時から定演全ステをさせていただいておりますが、今回は指揮・ピアノ・ホルンの大三元を楽しませていただきました。さて、自己紹介はこれくらいにして、どのステージも思い入れがあるのですが、今回は1ステ総括ということで1ステについて振り返っていこうと思います(それはそう)。
今年の1ステは例年通り難しい吹奏楽曲がメインの重いステージでした。自己紹介で「トリトンやばい」と悲鳴を上げていた奏者がかなり多かったのは(自分は)面白かったです。今だから言えることですが、1ステバンドは奏者の平均年齢が低くアマチュア奏者としての合奏や音楽に対する向き合い方、ポテンシャルが少々不安なバンドでした。中高の部活とは違った音楽活動の入り口にいる奏者の存在に私は妙な責任を感じたため、合奏では音楽的な味付けだけでなく、素材磨きという「自立したアマチュア音楽家の育成」をテーマに組み込んだ合奏を進めさせていただきました。実際やってみると実力ある奏者からも勉強になったと言われましたし、本番二週間前辺りにはどの奏者も圧倒的成長を果たしていたので、戦略として大成功だった思います。音量音色音程の制御の幅を広げ「どう吹くか」ではなく「どう聴こえるか」を意識する「自分の音づくりそのものに対するこだわり」、音楽の瞬間的な響きと流れの中で如何に吹くべきかを意識して音量変化だけでなく発音や細かいニュアンスも表現するという「音楽づくりの一員としてのこだわり」、の2つを軸に据えて合奏を進めてまいりました。この部ではあまり提唱されない基礎的なレベルからのアプローチだったかもしれませんが、今回の演目やバンドの特性ともマッチしていたように思います。この2つの基本的な軸は(たぶん)どんな曲にも対応できますので1ステの皆様は今後の音楽活動で自分なりに応用していってください。
さて、本番直前に奏者には発表しましたが、今回は「呆れるほど美しい音楽」を裏テーマに音楽作りをしてみました。呆れちゃいますね。私の爆音ガチャガチャステージを期待していた方はさぞ呆れたことでしょう。このコンセプト設定にはさまざまな理由があるのですが、せっかくなら吹奏音響学ではなく音楽として吹奏楽オリジナル作品の芸術性を追求する、音楽が聴衆の心に届くより前の聴覚的な段階で彼らに拒絶されない響きを作る、すべての音について考えを持ち「こだわり」の無い音を可能な限り少なくする、などなどなどの考えのもと、音楽づくりを進めていきました。結果として普通の合奏での注意事項にとどまらず細かいニュアンスや練習方法に至るまで様々な指示を時にパート別に活字にして投下するという試みも行いました。合計すると数万字か十数万字になる数々の「資料」は私の卒論(目安4万字)とどちらが重くなるのか?楽しみですね(ちなみに卒論は現在「永遠の0字会」を絶賛開催中です!)。この部だけでなくアマチュアバンドの常套手段とは少し違ったアプローチに少々物足りなさを感じた奏者もいたかと思いますが、1ステ演奏後のお客様の反応を思い出していただければ決して悪いものではなかったと納得していただけると思います。音楽の表現に関するアプローチはたくさんありますし、それが吹奏楽の大きな魅力の一つなのではないかと思います。時には今回みたいな吹奏楽があってもステキなのではないでしょうか?
さて、今回の演奏会もなかなか充実した内容だったと思いますが、実行委員の皆様無しにはどうすることもできませんでした。思えば予算の段階から口を出させていただいたり、奏者には申し訳ないと思いつつ振替合奏を全て1ステに集中させたり、前々日からはセッティングを中心に色々な所で一緒にお仕事をさせていただきました。1ステ2ステ間の転換は大仕事だったので転換プランを作ったりしましたが、拡張ひな壇などのセッティング、クラビノーバとスピーカーの設置ともに28のトレーナー二人が頑張ってくれたのは非常に心強かったです。演奏面でも運営面でも懸念材料とされる立場の自分ですが、その立場なりに動いて全力で協力するという方針でこの演奏会に向き合ってまいりました。奏者の皆様のおかげで1ステに関しては内心余裕があり、前日当日ともに裏方方面の仕事にも意識を回すことで演奏会の成功に少しは貢献することができたと(自分では)思っております。
最後に、1ステの皆様、最後までついてきてくれてありがとうございました。演奏活動から離れる人もいるかと思いますが、そんな人たちの最後の舞台が今回の1ステだったとしても恥ずかしくない演奏になっていたらと思います。今後も演奏活動をしていく皆様、特に29の皆様、これからは自立したアマチュア音楽家として自信と誇りを持って活動していってください。トリトンのような現代音楽臭甚だしい超難曲をあそこまで音楽的に演奏し会場を沸かすことができたというのは非常に稀有な事だと思いますし、それぞれの奏者の中で技術的にも音楽的にも一つの到達点として然るべき演奏になったと思います。合奏でも言いましたが本番の成功だけが1ステ合奏の目標ではありません。これからは一人のアマチュア音楽家として、「強くてニューゲーム」として、ここまで学び達成してきたことを生かして音楽づくりを楽しんでいただけたらと思います。皆様と一緒に音楽づくりができて本当に幸せでした。